北海道教育大学附属函館中学校生徒によるインタビュー

本研究所の河島茂生先生が、北海道教育大学附属函館中学校の生徒のみなさんからAIの未来に関するインタビューを受けました。

生徒のみなさんは、卒業研究のため「人類にシンギュラリティが起こった際に、どのように科学技術を進化させるのか」をテーマに研究をされていて、本学のシンギュラリティ研究所のAI研究に関するさまざまな取り組みに関心を抱いたとのご連絡をいただき、今回インタビューの場が実現いたしました。

インタビューには三木学長にもご参加いただき、AIに関する現状や本学におけるAI研究への取り組みについてお話をいただきました。

北海道教育大学附属函館中学校のみなさんと三木学長、河島茂生先生

北海道教育大学附属函館中学校のみなさんからのインタビュー

シンギュラリティは起こるのか?

そもそもシンギュラリティは起こるのか?という生徒のみなさんからの問いに、河島茂生先生は「今のところ、シンギュラリティは起こりにくいとされています」とご回答されました。

AI研究の現場においては、「CPU(PCや人工知能の頭脳に当たる部分)の処理速度が上がることと人間の頭脳を超えることは異質なのではないか」と考えられており、膨大な情報量を瞬時に処理できることが、必ずしも人間を超えることにはならないのではないかという考えから人工知能の技術が発展することでシンギュラリティが起こる可能性は低いとの見解が出ているようです。

しかし、河島先生ご自身は、「1機の人工知能の力だけで、人間を超えることは難しいですが、複数の人工知能がネットワークでつながった場合、どうなるかわからない」とのご見解をお持ちでした。

また、先生は「シンギュラリティが起こる起こらないに関わらず、人工知能技術の進歩によって人類にとって大きな変革が今後起こることは確かです。シンギュラリティ研究所はその部分に注目をしています。」とお話しをされました。

AIに莫大な資産や情報を与えれば人間を超えられるか?

AIに資産や情報など、莫大な投資をすれば人間を超えられるのでしょうか?この問いに対して「人間をどう定義するかによる」と河島先生は回答されました。

例えば、受験勉強のような教科書の内容を学習し正確に解答するような作業においては、AIは人間より優れた結果を出すことが可能です。しかし、いわゆる「空気をよむ」といったような相手の感情の機微を読み取って行動を変化させたりするといった行為において人間より優れるという状況が果たして可能かと考えるとき「何ができれば人間であるか」を定義することが「人間を超える」定義に繋がっていくとお話しされました。

日本でAIを人間として認める日はくるか?

EU諸国では、AIを「e-person」として定義する可能性が出てきています。では日本は同じようにAIを人間として認めるのでしょうか。この問いに対して河島先生は「個人的には来ないと思う」と回答されました。

河島先生は続けて「ロボットを人間として認めると責任の所在がわからなくなる」とお話しされました。人工知能は言うなればロボットです。人間として認めるということは、ロボットが過失を犯した際にロボット自身で責任を取るというということが必要になっていきます。EUではその責任の所在に関して、実際に議会に抗議文が送られた事例があります。

また、AIを人間とみなすことはすなわち「ロボットと人間を一緒にする」ということになります。ですが、人間はロボットのように休みなくずっと働けるわけではありません。したがって、企業では仕事をお休みする日や休憩時間が設けられています。逆に、ロボットを人間として扱うということは、人間と同じように仕事を休ませる日や休憩時間を設ける必要になるということになります。

責任の所在やパフォーマンスの制限などの観点から、AIを人間とみなすことは、AIとの付き合い方として果たして本当に適切なのかという疑問が出てきます。それらの疑問が解決されない限り、日本でAIを人間として認める日はこないのではないかとお話しをされました。

AIをどのようにうまくつかえば、AI・人間両方にとってよい形になるか?

この問いに対して河島先生は「分野による」と回答されました。生徒のみなさんから続けて「医療の分野に絞った場合はどうですか?」と問われ、先生は「支援と言う形で使われるのが望ましいと思う」と回答されました。

AI技術の進歩によって、今までの購買履歴からおすすめの商品を提案する機能や、曖昧な情報から知りたい情報を検索する機能が一般的になってきていますが、AIによって評価をされたとき、人間は果たしてAIが出した判断を必ずしも素直に受け入れることができるのでしょうか。その評価が就職や入学の合否など、人生を左右する決定に繋がる評価だとしたら、もし不合格だったときに納得して受け入れることができるでしょうか。

今のところ「人間のことは、同じ人間が、覚悟をもって決めよう」という考え方があるため、判定や評価まですべてAIにゆだねるのではなく、あくまで評価材料を支援提供するまでにとどめた方がよいとお話しをされました。

汎用的な人工知能が生まれた時、どういう科学技術が発展するか?

この問いに対して河島先生は「予測できない」と回答されました。汎用的な人工知能が生まれる状態はシンギュラリティが起こる一歩手前の状態であると予測されるためとのことでした。

シンギュラリティが起こる一歩手前の状態では、人工知能に対する”コントロール問題”が発生します。もはや人間では人工知能をコントロールすることができない状態なのです。そうなるとどのように科学技術が発展していくかは全く予想がつかないとお話しをされました。