9月から12月の3カ月間、オープニングイベントを含めた全17回にわたってAIとさまざまな視点から向き合う講義「AIリベラルアーツ塾」が開講されました。
AIリベラルアーツ塾
AIリベラルアーツ塾について
シンギュラリティ研究所「AIリベラルアーツ塾」のねらい
『青山学報』266号所収
堀田宣彌理事長の声がけもあり,三木義一学長が先頭に立って「AIリベラルアーツ塾」と銘打った塾を2018年度後期に特別に開催することとなった。AIリベラルアーツ塾の目的は,その名前の通り「AI時代のリベラルアーツ教育」を展開することである。ただ単にAI社会に関係するいろいろなことを学ぶのではなく,AI時代に人が拠って立つ,しっかりとした知的基盤の構築を目指すことである。AIのような最先端のデジタル・テクノロジーの内部メカニズムを大まかにでもつかみつつ,AIが組み込まれた社会を批判的に考え,どのような社会をつくりたいのか,未知のこと,答えが出ないことについても考え続ける能力を学生には身につけてもらいたい。
これまでの社会がそうであったように,未来の社会はデジタル・テクノロジーとのかかわり合いがますます密接になっていくだろう。デジタル・テクノロジーは実に変化が激しく,それにともない社会も変動していくと予想される。そういったなか,学生はいかに生きていけばよいのか。人生100年時代とすれば,いま18歳の学生は2100年の世界を目にする。教員も含めて,誰もその80年以上先の世界を正確に見通せない。未来は不確定であり,その未来は常に新しい技術に向かい合い続ける人生になる。そういった不確実性が増す未来に向かい合い続ける力を育てるのが教育機関の役割ではないのか。
このような目的がある以上,授業に参加した学生がすっきりしない感覚を抱くこともあるだろう。すぐさま回答が出るような問題に取り組むわけではないからだ。人気を取る授業ではなく,たとえ難しくても専門的なことをあえて話し,学生に深く考えるよう促すこともあるだろう。授業のなかには「分かる」ポイントは必要ではあるが,それがすべてではない。「分からないこと」があることを「分かる」ことも,また勉強であり,そうした分からなさへの付き合いかたこそ学んでもらいたいことだからだ。
9月22日(土),三木学長も登壇し,オープニングイベントを開催した。9月28日以降,計16回の授業が行われた。授業の担当者は,私を含め,McCREADY,E.S.JR.先生,LENZ,K.F.先生,野末俊比古先生,シュー土戸 ポール先生, 佐藤智晶先生,伊藤一成先生,吉田葵先生の8名である。取り上げた分野は「思想・倫理」「教育・学習支援」「コンピューティング」「法」「言語」だ。特段,網羅的に分野を用意することを企図していない。むしろ,受講生には限られた分野のなかで,AI社会のありかたを深く考えてもらうことを目指した。
AIリベラルアーツ塾は,リベラルアーツと名乗っていることもあり,多くの人数を集めて講演するかたちは避けた。こぢんまりとした教室で,学生と対話しながら一緒に考えを深めていくためである。金曜日の夜と土曜日といった学生が来づらい時間に,わざわざ卒業単位にならない授業を受けに来るだけあって,受講生は実に意欲が高かった。私の授業では,授業後に質問が相次ぎ,40分ほども教室から出られなかった。嬉しい誤算である。ほかの授業も,廊下から見ただけで熱気が感じられた。
AIリベラルアーツ塾は臨時で立ち上げたものであるため,2018年度限りで打ち切る。2019年度以降は,かたちを変え授業回数を増やし展開していく予定である。
AI時代のリベラルアーツ教育を目指すというのは,かなり壮大なことであり,まだスタートについただけにすぎない。学生と対話しながら,次の一手を打っていきたい。みなさまには力添えや応援を切にお願いする次第である。
河島茂生
授業の様子
校外授業
2018年12月5日(水)に開催された野末先生の授業の様子
日本マイクロソフト社へ訪問させていただき、ワークショップを行いました。